念願のバフ室・2

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僕は、バフという作業が好きというのではないけれど、バフで磨かれた後の真鍮の光沢に魅了されていると思う。
粗磨きからの数段階、さらに言えば材料の段階から数えると何度削られたり磨かれたりしているのか。 とにかくバフに入る段階を迎える時にはサンドペーパーで言えば#600〜#800くらいの粗さで研磨される。 ペーパーでの磨き傷で、白濁し、光沢のない真鍮である。

さてバフの開始だ。まず、粗磨き、これはヤスリやペーパーの傷を落とすのが目的。 実はここが一番重要である。というのは、ここで、真鍮表面のフラットを意識しないといけないのである。 研削力が大きいため、下手をすると、表面がダラダラと歪み、やたらと格好悪くなるのだ。 しかもこの段階ではその歪みが見えない。粗バフのバフ目がついてしまうのだ。経験と感の世界である。
フラットにしながら、トーンホールの形も崩したくない。それで前傷を残さずに磨き上げる。なかなか深いものがある。
まだまだ光沢は出ない。

中仕上げは、粗バフのバフ目をとるのが目的だが、これで終わりではない。 やっぱり、中仕上げの目がついてしまう。 厄介なのは、だんだん光沢が出てくるため、バフ目が見えなくなってくる。 だったらそれでいいじゃないかって?いやいや、そうではないのである。 車の塗装や、メッキ製品であれば、この辺でということもあるかも知れないが、楽器のバフは、基本がクリア塗装である。真鍮自体の光沢が必要なのだ。
※車の塗装は下地と色と光沢、と少なくとも3層位の塗装がされているため、下地の光沢は関係ない。 めっきは3〜5μになると、メッキの金属の光沢を出せる(テクニックは必要)ため、それほど下地の光沢はよほど酷くなければ大丈夫。 クリアラッカーという透明な被膜を通して真鍮の肌が見えてしまうばかりか、取り切れていない傷なんかが、また見えてしまうのである。

傷や、バフ目をゼロにはできないにせよ、何とかしなければ気が済まない。
ということで仕上げバフに移る。
綿綴じバフや綿バラバフ、キャラコなどから、ネルのバラバフに変え、しかもその横糸をドレッサーで飛ばし、ネル生地の縦糸だけで磨く。
磨き粉の種類や、その日の湿度。バフ機の回転数の調節。楽器をバフに当てる角度も当然重要である。

僕は、バフという作業が好きというのではないけれど、バフで磨かれた後の真鍮の光沢に魅了されていると思う。
うまくいったバフ後の光沢には、透かして見ると、真鍮の表面が透明でスケルトンのような輝きがある。 ニッケルのような硬い黒っぽい光沢もあるが、僕は、薄らとピンクがかった真鍮色が好きだ。
全自動機械の研磨法にバレルやブラストなどがあるが、こちらは、コインランドリーみたいで味気ない。すばらしく万遍なく素晴らしくほどほどに綺麗だ。
管楽器は、管体の形(構造)で音色が異なるが、その厚みでも異なる。重い楽器、軽い楽器、明るい楽器、ダークな楽器。
気に入った響きの楽器を板金やバフの技術によっては、響きが変に軽くモアモアっとしてしまうことがある。 外見の形を追い、内径を崩してしまったり、傷が深いからと言って、バンバンバフをかけてしまったりすると、このようなことが起こりやすい。

語り始めると終わらないので、ひとまず一区切り。
そんなこんなで、汚くて面倒な作業を まして僕とバフを語り合おうなどという輩はいないようで、結局、自宅の庭にバフ小屋を建ててしまった。 中古で見つけたバッファー(2台で6万)に200vの電気と集塵機、糸ゴミ飛散防止の小屋で10倍以上かかってしまった。バフ布にもこだわって縫ってもらった。
※東京で買って、長野に持って行ったら、サイクル(50hzと60hz)が違い、パーツを変えなければ中部電力の許可が下りず、何のために中古かったのやら(フーッ!)

さ〜て!これで、改造やリラッカー、リプレイトやレストアなどリペア、修理技術の世界にとどまらず、管楽器技術として広がってみたいと張り切っている。当年56歳!いつまで出来るか。
(※塗装とめっきは、規模の大きいものはやはり専門家がいいので外注です)

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